自閉症の子のおばあちゃんが、孫に言い聞かせていた。
帰ってこい。
…どこへ?
先天性の自閉症。お父さんが大好きで、お父さんの言うことはちゃんと聞く。
お父さんはこちら側との架け橋で、あの子はいつも自分の世界の中。
…どこへ、帰るの?
おばあちゃんの言葉を何度きいても、わからなかった。
そういうもやもやが、ちょっとした折に形になった。
形にしてみてやっぱり思った。
それはこちら側の人たちの傲慢だよな…
その世界があることを、認められない。その子の世界を受け入れられない。
だから、こちら側が帰る場所だと思っている。
向こう側を知る努力に疲れてしまっていたのかもしれない。
きっと、そうなんだろうけれど。
引っ越した先がしばらく自分の家じゃないように感じるように、ボケたじいちゃんたちが昔の自分の家を探しているように。
そのおばあちゃんの言う帰る場所は自分にとっての安息の場所なのだろうけれど。
膝の上で楽しそうにしていた女の子が帰りたい場所とは限らない。
こちら側にも遊びにおいで。ここはここで楽しいところだよ。
そうやって行き来するだけじゃ、だめなんだろうな、きっと。
逃げ出すことは、悪いこと。
そう決め付けてその子を責めてないだけ、よかったのかもしれないな。
(2008/04/24)
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