逮捕部屋

本日は晴天なり


 テントをたたんで、リュックにくくりつける。ひとつにまとめた荷物を背負い、膝を使って立ち上がった。傍らの相方を見やり、じゃあね、と片手を上げた。
「また」
 同じように片手を上げて、向こうも答えた。
 山頂近くでキャンプを張った。山の向こうからやってきた相方は、また山頂を越え県を越えて帰っていく。
 何度となく繰り返されている山行。そしてこれからも繰り返されるだろう山頂を目の前にしたキャンプ。いつか自分が向こう側へいってやると思っているけれど、今のところまったくかなわない。
「日が暮れる前に、帰って下さい」
 単独行というべきかいわざるべきか、そんなことも時々考える。
「わかってる」
 もう一度手を振ってから背中を向けた。
 足もとに雲が流れている。
「そりゃあたしの行いがいいからね」
 真っ青な空を見下ろして、夏実はこっそり胸を張った。