和  解 

 暖かな日だった。
 どこから住所が漏れたのか、ZAPPERと自宅に大量の年賀状が届いた。
 逃げ切ったとも思ってはいなかったが、多少減ることは期待していた。
 仕事が絡むだけあって、年中行事、特に挨拶については時に面倒に感じるほど皆が律儀だ。
 自分が正月前に書いたのは一枚きりだ。
 今の住所を知らせるためだけの、毎年一度きりの便り。それが国内であるときだけ、葉書が返ってきた。
 三日も経って、ようやく思い立ちそれらの整理を始めた。
 メーカーの形式だけのものは除いて、個人や、仕事関係のものだけを分けていく。
 その中から、それを見つけて、娘を呼んだ。
「返事、出しておいてくれ。」
 まだ何もかかれていない葉書とともに、それを渡した。
「うんっ」
 嬉しそうに頷いて、台所へと戻っていく。ランドセルの蓋の開く音、筆入れを出す音を聞きながら、年賀状の山に向き直った。
「…やれやれ…」
 宛名面に返信先を書き写しながら、ふと、口を突いた。
 あの人も歳かねぇ
 返信先の書かれていないその一枚には
 『そろそろ孫の顔を見せろ』
 一行だけ、書きなぐったように記されていた。

2004/01/05
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